病気の説明 アレルギー

アレルギーについて

アレルギーとは?

日常的に使われる言葉ですが、“アレルギーって何?”と聞かれると、答えに困る人は多いのではないでしょうか?

”アレルギー”という言葉は、さまざまな用いられ方をしています。意味を考えるとなると、”予想しない特殊な体の反応” 位の意味あいで使われているかもしれません。実際には、原因は何であろうと、人の体に起きる特殊な反応を全部ひっくるめて、アレルギー反応と呼んだりしています。

普通は、あまり厳密な意味で“アレルギー” が使われているわけではないのです。それでも私たちは、予想しない症状が急激に広がる時にアレルギーが起きた!と言います。

お医者さんに「これはアレルギーですか?」と聞いても、必ずしも、明確な答えは返ってきません。「そうです」という医師もいれば、「そうでない」という医師もいるでしょう。アレルギーという言葉がとても幅広い意味なので、医師は答えにくいのです。

実は、医学的に用いられる”アレルギー”という言葉は、もう少し、狭い意味です。

アレルギーの病気がなぜ、起きるかを学ぶ事は、とても重要です。それは、体のしくみを学ぶことにつながるからです。こんな事実があります。
  人は、清潔を極めすぎると、アレルギーが起きる。
  人は、病気の予防に努めすぎると、アレルギーが起きる。
  人は、人工的な物質を開発し、体内に入れると、アレルギーが起きる。
  誰が、どういう物質でアレルギーを起こしてくるかを予想するのは、不可能。
  アレルギーになった人のうち、誰が自然に消えるかを、予想するのはできない
  アレルギーの原因になるものを避けていると、アレルギーは良くならない。
  アレルギーの原因になるものを取り入れると、アレルギーは軽くなってくる。

人類が、病気から逃れるために獲得したしくみ(免疫)に逆らうようなことをすると、アレルギーが起きてくると考えてよいでしょう。つまり人が作り上げた学ぶ、慣れるという生き延びるためのしくみに逆らうと、起きてしまうのがアレルギーの病気なのです。

昔から、アレルギーを治すために、人は経験的に知っていることがありました。アレルギーの元となる物質を、積極的に体に入れていくと、症状が取れるということがわかっていました。それに反して、昨今は、アレルギーの元を減らして、避けて、病気を治そうと、がんばりすぎてしまいました。ダニを減らせ、食事を食べるな、と、アレルギーの元を無くせば、何とかなると考えてきたのです。それは、ダニや卵がアレルギーの原因になることがわかったからでした。

人類は、病原体を発見して、滅菌・消毒を徹底させ、生活を清潔にすることで、感染症を減らすことができました。しかし、そうした努力は、アレルギーを増やしてしまったのです。その不思議な関係も、医学が進歩して、わかってきたことでした。

思えば、アレルギーの病気は、不思議な病気で、文明を皮肉くるような特殊性があります。少しづつ、その様子がわかってきたのですが、まだまだ、完全解明には至りません。アレルギーを治すなどというふれこみには、まだ、乗らないでください。

人は進化の過程で、色々な有害物質を体外へ排除できるしくみを獲得してきました。
元々、動物は生き延びる能力を持って生まれてきます。哺乳類は、その頂点にたつ動物です。菌で汚染した食べ物を食べても、動物は負けず、下痢と嘔吐で、外に追い出しました。体内に侵入する病原体は、炎症を起こして追い出してきました。

中でも、人類は、猿人、原人、新人類への進化の中で、いつも、病原体を体内に抱え込みながらも、排除できる高度なしくみを維持してきました。さらに、一人の個人の単位で考えると、生まれた後に、さまざまな病気と闘いながら、抵抗力を獲得していきます。そして、大事なことは、病原体に囲まれているからこそ、動物としての人類の抵抗力は維持されてきたということです。つまり、病原体に囲まれていなければ、人類は弱っていくということなんです。

さて、アレルギーのしくみに戻って、病気の起きる機序を説明しましょう。私たちの体内で作られるIgEと呼ばれる物質(抗体)が、アレルギー反応を起こします。IgE抗体により起こる反応を、1型アレルギーと呼びます。

体内に、新しい物質が侵入すると、私たちは、抗体を作り始めます。これは、体を守る働き(免疫)のひとつです。作られた抗体は、体内に侵入した物質に結合します。抗体は、危険の可能性のある侵入物をめだせるために、それにくっつくのです。抗体のついた侵入物は、免疫細胞から攻撃され、壊されます。アレルギーに関連するのは、IgEと呼ばれるタイプの抗体です。

そこで理解しやすいように、乳児の卵アレルギーを考えてみましょう。卵アレルギーは、卵を食べた直後に、子どもが、嘔吐、蕁麻疹、咳などがでて、病気になります。

子どもは、卵に対するIgEを作ってしまうことがあり、そういうタイプの子どもで、症状がでます。全員ではなく、一部の子どもがIgEを作ります。そして、IgEをつくった子どもの一部で症状が起きます。
用心深い子どもが、IgEをつくってしまうと考えると、わかりやすいかもしれません。そして、用心深い子どものうち、調整の悪い子どもだけが、卵に反応してしまうと考えてください。

こうした子どもが、卵を食べると(体内に卵が入ると)、IgE抗体は、素早く卵を見つけて卵に結合します。卵が危険であると、体中に知らせるためです。子ども(の免疫)は、卵が危険な物質であると判断し、嘔吐、下痢、蕁麻疹などを起こして、卵を排除しようとします。その結果、病気としての症状を起こすことになります。

しかし、卵を最初から、すんなり食べられる子どももいます。多くの場合、卵は無害なものです。このように、特殊な一部の体質の人のみ、反応がおきる病気をアレルギー反応と呼びます。

IgEは、侵入した新参物質に対し、すばやく敵とみわけて排除する反応を立ち上げることができます。哺乳類のみが持つ高度な免疫のしくみです。IgEの起こす反応は、危険な性質も持っています。まれですが、低血圧やショックを起こすことがあるのです。

しかも、IgEは、敵か味方かの判断が、いつも同じではないのです。最初のうちは、IgEが、危ない侵入物(敵)と思っていても、IgEが、何度も侵入物に出会うことにより、敵でなく味方のようだ!と判断を変えていきます。それが、IgEの特徴です。子どもの成長と共に、アレルギー反応が変化し、反応が無くなるのです。間違った判断が修正されます。

卵を食べても、食べなくても、卵アレルギー反応は起きなくなることが多いです。その理由として考えられていることは、卵を食べずとも、結局、体の中に、例えば、皮膚や口から、卵の成分が入ってしまい、アレルギー反応がゆるんでくるのではないか?と考えられています。目で見えずとも、卵成分は、日常生活の環境から無くすことができないからです。なべや釜などを必死で洗っても、所詮、見えない卵成分を避けることができないのだろうと考えられるようになりました。

アレルギーを起こすか起こさないかは、同じ人でも時と条件で変わって行くものです。

血中IgE抗体量は、日常の診療の際に、血液検査をすることにより、その量が測定できます。血液中のIgE抗体を測ることで、何がアレルギーの原因になっているか、おおよそ知ることができます。

IgE抗体を調べる方法は、血液中のIgEを測定する方法と、皮膚テストがあります。
プリックテストと呼ばれるものは、皮膚を軽くひっかいて、ダニや花粉など各種の抗原液をのせて、15分後に赤くなるか、腫れるかを判定します。

しかし、血液検査や皮膚テストで、すべてのアレルギーの判定ができるわけではありません。アレルギー検査は便利なものですが、その解釈には慎重でなくてはなりません。
つまり、IgEが存在しても、アレルギーが必ず起きるわけではありません。

又、近年、IgEではなく、IgGを測定する試薬キットというのも発売されていますが、これは、さらに解釈が難しいものです。保険診療では検査できず、高額な検査キットが使われ、測って調べても、アレルギーに関連しているかの結論には至らないです。

抗体の働きは、すべてが体に良いことばかりでなく、有害なこともしばしばあります。体内の抗体は、適当な量で作ることを止める必要があります。体の免疫反応は、止めるしくみがとても、大事です。

人は、日常的に、いろいろな物質に囲まれていますが、すべてには、反応してはならぬ!一部の物質のみ反応せよ!と、体の免疫から指令を受けています。抗体は、当初、新しい侵入物質をターゲットに作られてしまうのですが、自然と、作られるのが止まります。抗体は、諸刃の刃なので、作ってしまうと危険なのです。抗体は、病原体を殺すが、体も壊す力があるからです。

抗体産生が止まらない遺伝子異常の病気がありますが、こうした人では生まれることも。生きて行くことも難しいです。

自分の体に反応する物質(抗体)を作ってしまうと、起きてしまう病気を、自己免疫疾患と呼びます。この現象は、免疫細胞が調節機能を失っている状態で、敵と味方がわからずに、混乱している状態です。抗体の産生は、程よいところで止まることが、必須の条件なのです。過剰な抗体が働けば、人は、自己免疫の状態になり、病気になってしまいます。現在も難病として残っている病気には、こうしたタイプの自己免疫が多いです。

気管支喘息

息(空気)の通り道(気道という)が縮んで、狭くなる病気です。狭い道を空気が通りますので、笛をふくように、ヒューヒューと音が出て、息が苦しくなります。また、咳込みや、分泌物(痰)を伴います。

気管支が狭くなる理由は、まず、気管支の内側の粘膜が腫れます。次に、気管支の壁から分泌物(粘液)がでて、さらに狭くなります。最後は、気管支をとりまく筋肉がぎゅーと縮むので、ますます細くなります。

喘息の人は、気管支が縮みやすい体質を持ちます。環境中には、気管支を縮ませるいろいろな刺激があります。ウイルスや菌などの感染因子等も、気管支を縮ませる主要な因子です。吸い込むと喘息発作を起こす物質を、吸入性抗原と呼びます。代表的な吸入性抗原の種類は、ダニ、ハウスダスト、ペットですが、人により吸入性抗原の種類は異なります。気管支の縮みを繰り返していると、気管支はますます縮むようになります。

欧米、オーストラリアなどの先進国では、喘息の人が多いです。しかし、地球上の特定の場所や、先進国のみに集中しているわけではありません。
ここが、喘息発症の原因は、世界共通ではないと推定される根拠です。国ごとに、気管支を縮ませる刺激因子が、異なるということなんですね。

例えば、空気のきれいな環境で育った人が、空気汚染の強いところに行った場合には、喘息が起きることがあります。ところが、元々、空気汚染が強いところで育った人は、喘息にはならず、慢性気管支炎になったりします。このように、環境と素因など、複数の要因を検討していかないと、喘息の発症に迫れないのです。

まず、一番、喘息になりやすい人とは、気管支が縮み易い人のことで、体質を持ち合わせた人ということになります。こうした人が、環境因子の影響を受け、発作を起こすようになります。さらに環境の悪化(住環境の悪化、ストレス増大)など、発症原因が増えるにつれて、2番目、3番目に気管支が反応しやすい人に、喘息が起きてきます。喘息発症のハードルが低くなっていくと考えられます。

アトピー性皮膚炎

アレルギー体質を元におきてくる、かゆみのある慢性の皮膚炎(湿疹)です。ぶつぶつ、ぽつぽつ、かさかさ、じくじくなどのタイプが変化していきます。
アトピー性皮膚炎は、年齢により変化します。乳児の離乳期には、皮膚にはいろいろな反応が起きますが、治まることが多いです。この乳幼児期は、食べ物全体や環境にある物質に、いろいろと皮膚の反応が起きやすい状態となっていますが、一過性の事も多いです。食べ物成分が胃腸からでなく、皮膚や気道から吸収されることもあります。

アトピー性皮膚炎の発症には、保湿成分がうまく作れないという体質が関係します。そうした体質に加えるに、心理的、生活環境要因、感染症など、いろいろな悪化因子の影響を受けます。

悪化因子を取り除き、炎症を抑えるくすり(ステロイド剤、免疫抑制剤など)を、うまく使いながら、皮膚の保湿に心がけて、健康な皮膚の状態に近づけていきます。治療成果をあせらずに、有効な対処法をみつけていきます。

花粉症/アレルギー性鼻炎

空気中のダニ、花粉、ペットなどのアレルギー物質により、鼻や目の粘膜が赤く腫れて、かゆくなる病気です。鼻アレルギーは、くしゃみ、鼻づまり、鼻汁の3症状を、特徴とします。

花粉症は、ある特定の花粉に反応するため、季節性があり、鼻症状に限らず、目やのどに症状が出て、時には、奥の下気道炎(気管支)も、イガイガします。症状にひどい人や、他の臓器、膀胱症状や神経系などの症状を訴える人もいます。

くしゃみがたて続けに止まらなくなったり、目や鼻に激しいかゆみがおきます。目は赤く涙目になり、鼻がつまり、透明な鼻水がすーとたれるようになります。朝と夕方に起き易いです。

アレルギー物質が、目や鼻にふれると、アレルギーを起こす細胞が刺激され、内部からアレルギー物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が出ます。これらの物質が、目や鼻の症状を起こします。
アレルギーのある人のマスト細胞は、活動しやすくなっています。

日本におけるアレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)は、1年中、私たちの身の回りに存在するほこり(ダニ)や、花粉などが原因となることが多いのです。

杉、ヒノキの花粉症が多く存在します。雑草では、イネ科の花粉症が多いようです。カビも関係する場合があります

食物アレルギー

食物が原因となり、じんましん、湿疹、下痢、嘔吐、せき、喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼー、ヒューヒュー)】などのアレルギー症状がでる病気です。症状は多彩で、軽症から重症までさまざまです。食べて症状が出る病気はいろいろありますが、そのうち、一部が食物アレルギーによるものです。

食べてすぐ症状がでるタイプと、食べてしばらくたってからでるタイプがあります。
食べた後に起きる不快な症状が、皆、アレルギーというわけではありません。食物アレルギーとよく似た病気に、食物不耐症(イントレランスと呼ばれる)というのがあります。これは純粋なアレルギー反応ではなく、類似の反応です。食後の症状だからと言って、アレルギーであると断定はできません。食物に対する体の反応は、とても複雑なため、すべてが解明されているわけでありません。

食べることは、日常生活で大事なことです。毎日の食事の時に、食べるものが、ひとつ、ひとつ心配になると、子どもも大人も、生活の質はかなり低下してしまいます。一度食物アレルギーと思いこむと、その後に食べれなくなる人が増えています。小児では、アレルギー症状がとれることが多いので、本物の病気かどうかの評価が必要です。

原因はよくわかっていませんが、先進国に、食物アレルギーが多くなる傾向です。日本において、成人を含めた全体の食物アレルギーの頻度は、1-2%位と考えられます。乳児では、さらに多く、5-10%位ですが、軽症なものも含めると、もう少し、多いと思います。日本のアレルギーの病気は、欧米より少ない頻度ですが、今後は、食物アレルギーも、欧米並みに増えると思われます。

欧米では、重症型の食物アレルギーが日本より多く、欧米人では、4-5%位に、食物アレルギーが起きているとの報告があります。
又、食後になんらかの症状を訴える人は、2割位はいるというデータもあります。

症状が誘発されやすい条件というのがあります。血管を拡張し、循環をたかめるものなどです。例えば、運動、入浴、飲酒、感冒、過労、ストレスなどは、アレルギー反応に影響を与えます。下痢をすると、腸管粘膜がもろくなって、大きな蛋白質を吸収してしまうため、食物アレルギーが起き易くなると考えられています。

又、人の精神状態が変化すると、アレルギー症状も影響を受けます。興奮時には、アレルギー反応は抑えられますが、条件の組み合わせ方で、逆の結果となることもあります)。
それだけ、アレルギー反応とは、個人差の大きなものです。

アレルギー疾患の関連疾患

蕁麻疹

蕁麻疹は、皮膚に、赤み(紅斑)、浮腫を生じ、痒みを伴います。蕁麻疹は、主として浅い皮膚の表面的な変化を指し、皮膚の深い部分で起きる類似の反応を、血管性浮腫と言います。

蕁麻疹が起きる原因は、皮膚に多数存在するマスト細胞の活性化です。マスト細胞は、細胞の内部からヒスタミン等の物質を放出し、皮膚微小血管を拡張させ、血管から血液成分がもれやすい状態にします。

蕁麻疹は、急性と慢性に分かれますが、日本では、4週間を境に、期間が短いものを急性、長いものを慢性蕁麻疹と呼びます。頻度は、一般人口の0.5-1%の程度と考えられています。

深部の浮腫である血管性浮腫は、口唇、眼瞼に好発し、痒みや紅斑を認めず、皮疹は2,3日持続することが多いようです。

慢性蕁麻疹は、感染、疲労、ストレス、日内変動等が誘因となりますが、治療成果をあせらずに、少し気長にかまえましょう。そうしたゆったりした気持ちが、治療にもつながるようです。

実際の診療の場では、他に身体所見がない蕁麻疹や、特別な特徴がない蕁麻疹は、原因検索を進めるのは困難です。発熱、全身倦怠、関節炎などの全身症状を伴う時は、蕁麻疹も、膠原病に伴う症状である可能性が出てきます。

慢性蕁麻疹では、症状、経過に応じて血液検査などを行っても、決め手となるものは少ないのです。急性蕁麻疹では、しばしば上気道感染時に合併します。ウイルス感染症がきっかけとなり、慢性蕁麻疹が始まる場合がありますが、なぜ起きてくるのかはわかっていません。

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