体の変調を感じた時の考え方のヒント

体の変調を感じた時の考え方のヒント

あなたが”病気がある”と感じている症状は、あなたが一番よく知っています。その大事な情報をしっかり選んで、医師に提供していきましょう。症状を伝える時は、最初はご自身の感想を入れないでください。客観的事実につとめてください。そして、標準的治療をしてくれる医師か、直感的にチェックしてください。

それでは、ひとつひとつ症状について見ていきましょう。
(↓の各症状をクリックすると、それぞれの項目へジャンプします。)
体が痛い  眠れない 不安や不満を抱える心  皮膚が赤い、痒い  皮膚のかぶれ

体が痛い

体の痛みはとても多い訴えです。ところが、痛みは多いけれど、その評価や治療は難しいものです。主として、女性は家事労働、男性は肉体労働などで体に負担をかけます。無理な動作や姿勢を続ける、力を入れて作業するなどして骨格、筋肉に負担をかければ、体は痛くなります。

もともと女性は骨格、関節、筋肉が弱く、男性は強い骨格を持つだけに無理な肉体労働をしてしまい、結局その負担が大きくなります。
酷使した体は、たまった疲労物質などを取り除こうとして炎症を起こします。炎症は、痛みと腫れに代表されます。肩こりなどもそうした体の反応の一部です。
痛みと腫れは、回復に向けた1ステップです。休めば筋肉は疲労物質を分解し、痛みが取れていきます。すみやかに痛みが回復すれば、また働かせて大丈夫な状態と考えてよいのです。

しかし痛みに対し、炎症を抑える薬を使う場合があります。炎症を抑えれば一時的には楽ですが、回復は遅れます。薬は、根本を治しているわけではありません。
痛み、腫れを回復させないで疲労を積み重ねると、その部分のつくり(組織)は弱くなり、最終的には構造が壊れて行きます。

男女を問わず、痛みは、メンタルな影響をおおいにうけます。
特に不安・不満を多く抱えていると、体の痛みは、実際の痛みより耐えられないような強さになってしまうものです。これは、脳の関与が大きくなるからです。
仕事や作業がつらいとの思えば、この仕事から逃れたいとの思いがあります。

加齢により、体力は低下していきます、男性は、同じ量の肉体労働でも、負担が大きくなります、女性は、かつて、はりあいのあった料理や掃除などの家事の負担が大きくなり、子どもの成長など環境の変化が加わります。以前は楽しくできたのに、今はできないと悩む女性は多いです。家庭内暴力などをうけている、夫の小言が多いなど不満を抱える女性では、痛みを強く感じたりするものです。

義務的な仕事、展望のない仕事、成果がない仕事、けなされる仕事、怒られる仕事、不安を感じながらの仕事、これらはすべて人の体と心の両方を傷つけます。人の体の痛みは、心の痛みが加わることにより、ますます強くなってしまいます。

人は原因不明な痛みを感じた時、医師による診療を求めます。
その際、医師が痛みの原因を推定しやすくなるための情報提供をお願いします。
医師は、あなたの日常の環境や性格は知りません。まずは、あなたの感じている痛みを、経過を追って説明してください。悪くなる時や、軽くなる時の条件などにふれてください。

医師はあなたの話を聞きながら、大事な病気が隠れていないかを、一番気にします。医師は、急ぐ進行性の病気があるか?放っておいたら広がるか?などを、最初に考えます。そのために検査などを行います。検査は、あなたが今感じている痛みの原因を、直接に解明することにはならないかもしれません。

検査しても、原因がよくわからないと言われたら、がっかりしないでください。診断名がつかない病気の方が、質が良いと考えてください。あいまいな病名をもらっても、何の意味もありません。定義のはっきりしない、冷え、バランスの乱れ等の漢方系の診断には、まどわされないでください。

鎮痛薬は、治るためのものではありません。薬は病気を治すのではなく、体の反応を抑え込んでいるだけです。
体の痛みは、体からのサインとみてください。これ以上に負担をかけないで欲しいとのサインです。体は、痛み腫れなどの炎症を起こして、早く体を元の状態に戻そうとしています。薬はそれを抑え込みます。短期的には、薬はとても役にたつのですが、長期的には効果は少なくなり、体への負担は増していきます。

眠れない

不安や不満を解決せずして眠ろうとあせると、脳に負担です。眠ろうとあせることは、休みたい脳に新たなストレスを与え、脳は休めず又めざめてしまいます。
睡眠薬は、不安や不満までは消してくれません。現在かかえている不安や不満が重大であると感じる限り、脳は何とか対処したいとあせったモードに陥っています。

不安や不満は誰でも感じるものですが、不眠につながらない人は、不眠に強い資質を持っています。脳内コントロールに、有利な条件を持つ人かもしれません。
眠れない人が、眠れる資質を得たいと願ってもうまくいきません。自分に無い能力を、薬が授けてくれたりはしません。不安や不満を解消できる能力を、薬はさずけません。薬に不眠を治す力を期待しても、裏切られます。

薬は、ある程度の鎮静効果は期待できます。薬の効果は信じましょう。今をしのぎ、エネルギーを蓄えるために、あなたに合った薬の種類と使い方をさがしましょう。
睡眠薬をどのように有用に使うかは、あなたの判断が大きいです。睡眠薬は、不安を感じる脳部分を抑える作用を持ちます。しかし、薬に頼ることは、日常の活動のエネルギーを落とすことがあります。

薬を使った方が楽になるのか?そうでもないのか?副作用はどうか?など、薬の効果には、個人差が大きいです。あなたの使う薬のバランスは、あなただけのものです。あなたの選択が大きいのです。
睡眠薬による治療には、限界があります。医師が処方する治療薬は、限られています。医師は、副作用のない薬を持ち合わせているわけではありません。睡眠薬が効かなければ、結局は、薬のない状態に戻ることを勧められてしまうかもしれません。

処方する医師により言うことが違うと、不満を述べる人がいます。医師によって言うことが違うような治療は、決まったやり方が無いのです。個人に応じた使い方をしている薬です。あなたの効き方や、あなたの考え方を考慮して、薬の使い方を工夫します。
もし、医師による説明が違えば、そこに病気克服のヒントが隠れているかもしれません。医師が発する言葉の微妙な違いが、あなたに有用に作用するかもしれません。

眠れた日はよかったと思うものの、眠れない日をこだわらないこと、早急に解決できなくて良いと考えましょう。待つ心、責めない心、気づきの心など、あなたの持ちあわす心の回復力を期待しましょう。

不安や不満を抱える心

不安や不満は、脳がかかえる症状です。それを、克服するのも脳の仕事です。
人の脳は、考える能力が特に優れています。不安や不満が高まる時、脳は、休むことなく、克服に努めています、つまり、不安・不満をかかえている限り、脳は活動を中止しないのです。

ベッドに入って、脳が寝る時までには、不安・不満をある程度に収めておく必要があります。そうでないと、眠ろうしても脳が眠らず、抱えている不安や不満が現れてしまいます。眠ろうとあせる気持ちは、不安の大きな要素です。

抱える不安を、少しでも軽減できそうかも・・・、ここを変えた方がよさそうかも・・、と思うやり方がみつかれば、変えるために踏み出してみましょう。

しかし、他人を変えようとしてはいけません。他人は変えられません。変えられることは、自分自身の問題だけです。あなたが変えられない他人について悩んでいても、不安と不満はつのるばかりでしょう。あたなの精神状態に、良い解決は望めません。つまり、あなた自身の不安・不満の改善にはつながりません。

不安の直接解決が難しいと思うなら、むしろ、考え方の選択肢を増やす事を心掛けてみましょう。
捨てる、あきらめるという心も、あながちネガティブとは、限りません。
大事な選択肢です。

不安の背景は、性格や資質が占める部分が大きいです。不安を感じやすいのは、あなた自身の脳(心)の特徴です。あなた自身を、責めてもだめでしょう。

あなたの不安をなだめて、解消に向かわせる力を発揮するのは、あなたの脳です。
脳には、それぞれの役割を果たす部分があります。不安・不満の情報を発信する脳部分、なだめ、克服するための脳部分などです。不安・不満をなだめる能力が高いのは、前頭前野と呼ばれる高等な脳です。ここは、人間が最も発達した部分で、不安・不満の解消のための、高いエネルギーを秘めています。

脳は、目でみての情報、耳で聞いての情報、においからの情報など、すべての感覚を脳にインプットして、脳の正常性、恒常性を維持しようとしています。脳は、不安や不満をかかえた状態を無くそうして、必死に働いているのです。

脳の各部分は、お互いに連携しながら、難局を乗り切ろうとしています。脳は最初から、その作業をうまくやりません。脳は、トレーニングされながら、試行錯誤を繰り返します。ですから、作業がスムーズに進まなくても、結果だけ見て、脳をせめないでください。脳は、失敗をしながら、学習しているのです。

脳が、少しずつでもエネルギーを回復してくれば、新たな展開が起きます。脳には元々、治そうとする働きがあるのです。高等脳には、不安・不満を忘れさせて、新たな勇気を上書きし、生き物が元気になる力を秘めています。少し勇気の戻った脳部分は、あなたの他の脳部分に感謝するはずです。

脳の働きを知ることが、脳の潜在力をイメージすることにつながると思います。

あなたの脳をだれかに譲り渡して、他人に治してもらうことはできません。薬で治してもらいたい、どこかに良い薬がはるはずというあせる気持ちは、復活しようとしている脳に負担をかけることになると思います。

脳の血流の検査fMRIなどにより、脳の働きが明らかになってきました。不安をかかえる原始脳が、高等脳に助けを求める様子が確認できます。不安脳をやさしくなだめる高等脳が、じょうずにそのやり方を覚えるようになるまでには、ある程度の時間がかかります。神経細胞は、突起を作ったり消したりしながら、少しづつ回路変化を繰り返しているのです。

安心するまでの時を早く、不安を思う時は短く、そうした思考回路に変えてくれるしくみを、脳は持っています。
不安を感じにくい脳、苦しいことを忘れる脳、逃げない脳、あきらめる脳、すべて扱いのたやすい脳にしていけると思ってよいのです。

そうした経験の途中で、鎮静薬を利用しても良いでしょう。薬に頼るなと言っているわけではありません。不安・不満を抑える物質を求めて、長い時間、人々が努力し、作りだしてきたものが薬です。
その薬を有用にするのは、あなた自身です。薬は、新たな展開を生み出す力がありますので、生かすも、負けるもあなた次第です。

脳が回復モードになっていけば、さらに回復のエネルギーが見えてくると思います。回復する心が、新たな回復へのエネルギーを生むのです。脳の力は、人間に限らず生物が生き延びるための原動力となっています。

苦しいときの神頼みは、おすすめできません。
苦しいときに、宗教にすがる場合がありますね。
信じがたいことを信じさせるようなことがあります。

これも一種の脳内回路の作成と言えます。神経回路を人工的に作ろうとする作業です。葛藤を克服するために、脳の中に信心という特殊な場所と回路を作るのです。

信心を前頭葉部分に準備しておいて、そこにたどり着けば、不安が消えていくように関連付けようとする方法です。ですから、信心しない人にとっては、人工的に脳が無理やり操作された印象があります。

皮膚が赤い、かゆい

皮膚は外から見えてしまうので、人々は皮膚にトラブルが起きるとそれをとても気にします。人から見られる場所については、人々の悩みは大きいものです。
皮膚は外界からの刺激を常に受け、とても敏感な構造物です。ある時皮膚は刺激に反応し、ある時は刺激を無視して反応せず恒常性に努めています。何もない健康な皮膚でも、いろいろなイベントは起きています。

健康な皮膚は、外界の温度、湿度などの変化にかかわらず、保湿成分をしっかり作り体の内部をスムーズに包みこみます。

皮膚には、たくさんの監視機構があり、異物の付着をチェックしています。皮膚は、外来の有害物質に反応し、皮膚に触れたらその異常物体をチェックします。
皮膚は、自らに触れたものの中から、反応すべきものと、反応してはいけないものなどを、見分けています。皮膚は、慣れ親しんだ刺激に対しては反応しないよう調節がされています。顔などは常に外界との接触が多いので、反応を低下させるしくみがあります。こうして、皮膚には、かゆくなったり、赤くなったり、腫れたりなどのトラブルが生じます。

天然の保湿成分が低下する病気が、アトピー性皮膚炎と考えられますが、この病気が難治であるのは、皮膚の調整不能が原因としてあるからです。
こうした皮膚の病気を理解するのは、難しいのですが、いろいろな皮膚の病気の事例から、皮膚の働きが理解できます。

まず、小麦の石鹸事件を思い出してみましょう。
小麦入り石鹸を良く使った人の一部で、小麦アレルギーが起きてしまう事件でした。皮膚に残った小麦分解産物が、アレルギー反応を起こしたのです。
皮膚の監視細胞が、皮膚に残った小麦成分を異物であるとチェックしました。その結果、皮膚が赤くなったり、かぶれたようになったりしました。さらに、小麦を食べると、発疹、胃腸症状(嘔吐、腹痛、下痢)、全身アレルギー反応が起きたのです。
皮膚が刺激を感じた時には、とても敏感に反応するのです。もちろん、小麦アレルギーは、石鹸使用者のごく一部の人に起きた病気でした。予め誰がアレルギーを起こすかは、どの位の割合で人が小麦に反応するようになるかまでは、わからなかったのです。
小麦アレルギーは、消化管アレルギーの代表的な病気のひとつです。

皮膚は、胃腸より敏感な臓器です。
皮膚に比べると、胃腸はアレルギーが起きにくい臓器と言われています。
その理由は、胃腸は常に新しい物質(食品)が入ってくるので、反応を抑えるための仕組みが働いているのです。

皮膚のかぶれ
多くの皮膚のかぶれは、接触性皮膚炎の病名がつきます。
その原因物質が簡単にわかれば、かぶれを避けることができますが、しばしば原因物質をはっきりさせることができません。
かぶれを起こす物質は、多岐に及びます。果物、野菜は生体活性物質と呼ばれ、皮膚を刺激する成分が多く含まれています。さらに、人工的に新しくつくりだされた物質は、皮膚に過剰反応することがあります。

最初接触性皮膚炎で始まっても、病気が変化していくことがあります。
たとえば細菌やカビが増えたりして、単純な接触性皮膚炎ではなくなります。最初ステロイド軟こうが効いても、だんだん効かなくなったりします。
老人などでは、保湿成分の低下に伴い、かゆみが増強します。かきこわせばさらに皮膚は変化していきます。手がかゆみの部分にふれるだけで、皮膚のかぶれは続いてしまうのです。
血圧の薬なども、皮膚を敏感にします。薬の効果で、皮膚の血管が開いたり(赤くなる)しやすくなるからです。

医師の前にだまって座るだけでは、医師は皮膚のかぶれの原因物質はわかりません。医師が皮膚のかぶれの状況から、その原因を決めることは難しいです。

受診時は、あなたが皮膚にどんな刺激を与えたかを語ってください。○○がついた、その部分を掻いた、手で擦った、顔ならば、鏡で見る時に皮膚をのばしたり、縮めたりした、などの情報です。

日常の出来事や行為について医師に語ってください。ステロイドなどで、治療している場合は、情報提供が特に大事です。

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