参考(病気)事例

このサイトでは医療現場でのやりとりを設定し、検討します。事例検討です。 

医師と患者様の良好な関係作りをめざして、いろいろなシチュエーションを設定して、事例検討してみましょう。以下に書いた例は、実際の経験を参考に、理解しやすいように脚色したものです。医療現場における誤解は、できるだけ避けたいものです。

医療を受ける人と授ける人は、お互いに、相手を尊敬し、自分の気持ちに素直になって、会話をかわすと、良い方向へ向かうことが多いです。お互いの誠意が確認できて、誤解が生じにくくなるからです。
医師も患者も、めざすところは、同じです。
あなたにも参考になったり、当てはまったりする課題があるか、探してみてください。

50歳男性 会社員の話 

酒が好きで、アルコールは毎日飲んでいる。会社の年度ごとの検診にて、肝機能がやや上昇してきている。お酒をひかえるように、検診医から指導を受けていたが、酒をやめるのが出来ずにいた。しかし、ある年度に、肝機能異常の数値がさらに悪くなり、関連病院への受診を勧められた。

男性は、関連病院に行き、診察を受けた。初診時の女性の医師から、お酒をやめて1週間経ったら、再度、病院を受診するように告げられた。その再診時に、再度、肝機能を検査しましょうと言われた。男性は、医師のこの言葉に、大いに立腹した。

この男性の言い分は、以下のようであった。
医者は、薬もださない!アルコールが原因なのだから、止めればよくなるに決まっている!そんなこと、医者じゃなくてもわかる!であった。
この男性の医療不信は、その後も続き、二度とこの病院には行かなかった。

さて、この医療不信を、どう解消できるかを、考えてみましょう。

まず、男性も主治医も、双方、言葉が足りなかったと思います。誤解や不信感が生じた原因について、少し考えてみましょう。

この男性患者にとっては、1週間、酒をやめるなど、とんでもなく難しい指示だった。彼は、お酒を止めるのは極めて難しいのである。そして、男性自身は、酒を止めれば、検査値は良くなると信じていたらしい。

男性は、肝臓の病気についての知識が十分でなく、アルコール性の肝障害以外の病気があることをイメージしていない。がんなど、悪いタイプの病気など、他にもたくさんある肝臓の病気を、医師は鑑別しなければならないという知識が全く無い。

この男性は、禁酒が難しく、それができないから病院にきているのに、なんで薬をくれないのか?と、憤まんやるかたなかったようだ。彼は、肝障害異常を直す薬があると思っていた!。

結局、彼は、二度と行くものか!と思い、病気を何とかしたいとの彼の気持ちはそがれてしまった。せっかく、病院に行ったのに、もろもろの知識の習得に至らなかった。

この男性が、今の状態からアルコールを止めることがとても大変であることを、医師自身が読み取る必要があった。そして、肝機能を治す薬はないことを、この男性にもっとわからせる言葉が必要であった。

医師は、アルコールが原因で起きているのか、それ以外の原因から来ているのかを確かめることが、最初にやるべきことであると、患者さんに告げる必要があった。

最初に、医師は、そこを男性に説明するのが不十分で、男性を納得させなかった。他の病気との鑑別のための、1週間の禁酒であることを、具体的に説明できなかった。医師は、説明したかもしれないが、男性に納得はさせられなかった。

患者さんの機嫌にかかわらず、そこを伝えなければ、次に進まない。禁酒を指示された時、患者さんは怒った!しかし、それは、禁酒できない自分自身への反省も大いに混じっていた。ところが、男性は、女性医師の言い方や、薬もくれないことに腹を立ててしまってからは、ただただ、医者はひどい!の気持ちが高ぶってしまった。

初診時に決裂せず、ある程度、診療が進んでくれば、この男性のアルコール依存が強く、意思では飲酒を止めらないことがわかり、別のアプローチの提案につながったのかもしれない。

医師の指導だけでは、アルコール依存の強い患者さんが、簡単にお酒をやめられるわけがない。治療には、患者さんも多いに苦しむことを余儀なくされる。禁酒薬など、大変な苦しいしろものである。患者さんの気持ちが無ければ、医師はお手上げである。

お酒を飲まない女性は、しばしば、アルコール中毒の気持ちがわからない。しかし、女性医師は、不機嫌にしている男性患者に対し、圧迫感を感じたのかもしれない。早く、診療を切り上げたいと思ったかもしれない。こうした場合、お互いがひいてしまうと、会話が少なくなり、相互の不信感は、ますます高まる。

不機嫌な男性に歩み寄れるスキルが女性医師にあれば、この男性に、望ましい影響を及ぼせたかもしれない。結果はわからないが、女性医師は、内心どうあれ、プロとして、会話は交わす努力をする価値はある。

女性医師は話しやすいという評価があるのだから、スキルを発揮してほしい。結局だめでも仕方ないのだが・・・男性が変わっていくまで、時間をかせぐのも悪くない。

とにかく、男性を怒らせる前に、女性医師が、アルコール性でない他の病気を、説明していたら、もっと良かったかもしれないのである。

「お酒をお飲みですが、最初は、肝臓の病気がどこから来ているかを、広く見つけていく必要があります。肝臓は、痛みの無い病気もたくさんありまして、進行性のがんのような病気が起きていることがありますし、ウイルスのよる肝炎も多種類あります。。生まれつきにあった肝臓の病変が、次第に進行してきている可能性もあります。アルコールが原因であると決め付ける前に、いろいろ調べてみましょう。」

アルコールを一時止めて、肝機能が正常化するを、確認する必要性を、男性に納得させたかった。そのために、医師は、肝臓が悪くなる病名を、並べてみたかった。

男性は、医師がいろいろと自分のことを考えてくれていると、思ってくれたかもしれない。逆に、知識をひけらかすいやな女医と思われても、チャレンジはしなければならないだろう。

しかし、実際には、病気でないと思っている男性に禁酒させることはとても難しいことと思う。医師が、おどしたりの、励ましたりのとしながら、いい方向へ患者さんが向かえば、医師側もうれしい。、

男性は、メンツを大事にする生き物である。むしろ、酒飲みの男性医師なら、気持ちが通い合うかもしれないが・・・。ここは、女性医師には、お手上げである。

60歳代女性 

白内障の手術をしたら、まぶしくてしかたない。術後、まぶしくてチカチカしてしかたないので、気持ちが暗くなってしまったと言う。
治療を求めて、あちこちの眼科医を廻ったと言う。最初、執刀医に何度か訴えたところ、医師は、「僕はたのまれて手術したんだ。手術にミスはない。実際に、あなたの視力は良くなっている」。と言われ傷ついた。

患者さんの立場では、現状をこのように評価してほしい。
術後の目の状態は、術前とは違って変化した。60代の目は、元に戻すことは誰にもできない。こうした問題を、苦にしても、何も良いことはない。

今後、一番大事なのは、別の病気がおきてきたり、今の病気が悪化してしまうことを避けることだ。その時、手術をした執刀医が一番、あなたの目の状態を知っているはず。だから、執刀医との良好な関係は保っておくしかない。

前はもっと良かったというと思いだすのは、不毛であるし、根拠がない。
元と同じ状態になるのがあたりまえとの考え方を医師に押し付けるから、医師もひいてしまう。医師にも現状を治すための手段はないのだ。

双方とも、逃げや投げは、不信感をつのらせるだけだ!。

とにかく、こんなはずじゃなかったという考えは、その人を不幸にするだけである。手術の大小にかかわらず、手術とは予期しないことが起きるものとの覚悟は必要だ。それぞれの立場で、医師も患者さんも、共に、術後の悪さは、つらい気持ちである。

患者さんの立場では、手術ミスを証明できなければどうにもならない。この場合、視力が回復している限り、ミスを主張することは難しい。

手術をするかどうかの判断は、慎重であるべきだ。術前に説明を受けた時、いろいろ術後を想定し、医師へ質問しておくことが大事である。

30歳代女性 

胸が突然、ドキドキしてしまう頻拍症に悩まされている。何度か発作を繰り返し、循環器の専門医に勧められて、心臓電気伝達回路の焼却手術を受けた。
術後は、苦しかった手術の思い出で、気が滅入るようになった。さらに、ドキドキ発作はやや軽快したものの、今も頻拍発作は残る。主治医から、まだ、頻拍発作が起きるので、再度、手術が必要かも知れないと言われた。

女性にしてみれば、二度とあんなつらい経験はしたくない。なぜ、ドクターは、手術を1回でおわらせてくれないのかしらと不満に思う。再手術が必要かもしれないと告げる医師の言葉は、軽すぎると、この女性は言うのだ。
心臓の電気軸を焼くことが、とても手さぐり的な難しい手術であることを、女性は理解していない。

心臓手術の理解度は、ずいぶんと人により違いがあることと思う。
多くの人は、手術の難しさを本能的に理解してくれるような気がする。医師も患者も命がけである。だから、医師も、普通の説明で、患者の理解が得られると考えた。
いろいろなタイプの人の理解度に応じて、医者は、手術を説明することが必要である。相手の性格などを参考に、説明の内容を変えることが、医師には必要かもしれない。

もし、心臓の電気回路を焼き過ぎたら、電気が伝わらなくなり、心臓が止まってしまうなど、医師は心臓のしくみに戻って説明をする。心筋の電気の軸が目では見えない状態での術式など、執刀医は、具体的に、手術の説明をする必要がある。

医師は、経験を積み重ね、医師の勘にものをいわせながら、焼却を行う。医師も最大の努力をしていることを告げれば、女性の不満は、もう少し解消するだろう。決して、軽く言っているのではないのである。

女性は心配性で、物事をイメージする能力が劣る人がいる。女性に、良かれと思った情報提供をしても、理解できず誤解を招き、逆に、女性に心因反応をかかえさせてしまうリスクがある。病気に対する説明は、工夫が必要である。

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